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第2回モクモク全国食育交流フォーラム2012・講演(2)

ある女子大生が書いた作文が紹介された。
 
 大学入学が決まり、親と離れて下宿生活をすることになり、明日が引越しという日の夜。いつもは遅くなる父親も「今日は最後の晩だから」と早めに帰宅し、「今日は忙しかったけど最後だし、がんばって作ったよ」という母親の手作りハンバーグで、妹、弟と共に家族5人最後の食卓を囲むことになる。
ハンバーグはありふれたメニューだが、家族みんなが大好き。いつものありふれた食卓で、ハンバーグを一口食べたとたん、涙があふれて止まらなくなる。まさか泣くなんて思ってもみなかったのに、次々涙がこぼれる。「あれ?泣いてるの?あなたが泣くとは思わなかった」と言いつつ、もらい泣きする母。さりげなくティシュを差し出してくれる父。いつも通りふざけあいながら、ハンバーグを取り合いする兄弟。涙と鼻でグショグショになりながら食べ続けたハンバーグはとてもおいしかった。あの日の味は一生忘れないだろう…。というもの。

 ハンバーグを一口食べただけで涙があふれ出る。この女子大生は作文のなかで、「あのハンバーグにはすごい力があった」と言っている。けれど、すごいのはこの子の心。お母さんのハンバーグを一口食べただけで涙があふれ出るほど、この子のやさしい気持ちや親に対する感謝の気持ちが育まれていたということ。
 誰がこの心を育んでいたのかというと、お父さん、お母さん、兄弟も含めた家族。娘のことを思って早めに帰ってきた父親。忙しくてもファミレスに行くのではなく手作りでハンバーグを作ってくれるお母さん。「あなたのことが大事」と思わせてくれる両親がいたから。

このように家族とともに食卓を囲み、大切に育てられてきた子どもたちが大学生になり、母親がしてくれたのと同じように手作りの食事をしているかというと、そうではない。
今どきの大学生の食事の実態は……。

「何を食べましたか?」というアンケート調査の一部(2009年のデータ)

学生A 昼:食べてない 夜:コンビニ弁当 朝:食べてない
学生B 昼:おにぎりとブラックサンダー 夜:カルボナーラ・コーンスープ 朝:食べてない
学生C 昼:サラダ 夜:アイス 朝:食べてない
学生D 昼:イタリアンバイキング 夜:もみじ饅頭・ミルクティー・スナック菓子 朝:インスタントスープ・もみじ饅頭・スナック菓子
学生E 昼:マクドナルドでハンバーガー 夜:インスタントラーメン 朝:食パンとコーヒー
学生F 昼:パン 夜:パン 朝:パン
学生G 昼:学食でカレー 夜:ファミレスでねぎとろ丼 朝:コンビニおにぎり
学生F 昼:なし 夜:焼きラーメン 朝:アイスクリーム

 都会の大学、田舎の大学、私立、公立は関係なく、全国どこでもこんな感じ。
自炊をしている大学生はほとんどいない。
こういう大学生が社会人になり、急に料理ができるようになるか、結婚して子どもができるとできるようになるかというと、そんなことはない。
こういう若者が親になるとどうなるか。

 赤ちゃんの離乳食コーナーが充実している。
若いパパとママたちは、子どもにこの離乳食を食べさせる。
しばらくすると、赤ちゃんも自分で何でも食べられるようになる。大人と同じものを食べられる。そのとき、若い親たちは料理を作るようになるか?

 保育士130人にとったアンケート。「最近の保育園児の食生活で気になること、驚いたことは何ですか?」
・朝ごはんを食べていない子どもが多い
・朝ごはんにケーキだけ、シリアルだけ、果物だけ、プリンだけ
・朝ごはんにポッキー。1歳児の朝食がカップラーメン
・朝ごはんにみそ汁を飲んだことがない
・朝ごはんにパンを食べる家庭が4割
・朝食ぬきのせいか、10時のおやつをガツガツ食べる。昼食までもたない
・夕食に外食が多い。マクドナルドやファミレス、焼肉店など
・夕食にラーメンが何日も続く
・夕食がコンビニ弁当やファーストフード
・日曜になるとマクドナルドへ行きたがる
・子ども連れで21時すぎに居酒屋で食事をしている家庭がある
・外食の話が多い。1歳児のごっこ遊びにハンバーガー、ポテトなどの言葉が出てくる
・「一番好きな食べ物は?」と聞くと、「ラーメン!」と答え、そのラーメン屋さんの話で盛り上がっていた

 今どきの保育園児はこんな感じ。でも保育園児に責任があるかといえばそうではない。
問題なのは、この子たちの親。では、この親たちを責めて問題が解決するかといばそんなことはない。この親たちも社会が作り出した被害者。そうやって育てられてきた。
いい成績をとりなさいよ。いい大学に入りなさいよと言って育てられた。「お母さん、なんか手伝おうか」と子どもが言っても、「宿題すんだの?宿題を先にしなさい」と言われ、料理をするより家事をするより、勉強をする方が大事という価値観が生まれていく。親に言われるがまま、一生懸命勉強し、いい高校、いい大学に入り、自炊能力のまったくないまま親になっていく。
こういう親も社会が生み出した結果。だから親を責めているだけでは何の解決にもならない。でも何かを変えていかなければならないー。

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 佐藤先生は、最近の大学生や保育園児たちの食生活の現状を報告したあと、この現状を変えていくきっかけとして、「弁当の日」の取り組みについて話をされた。

 「弁当の日」は2001年に、香川県の滝宮小学校の当時の校長・竹下和男先生が始めた。
家庭科で調理実習のある5・6年生が、月1回の「弁当の日」に自分で作った弁当を持ってきて給食の時間にみんなで食べるというもの。
たった1校から始まったこの取り組みは、全国の小・中学校、高校、大学にまで広がり、2012年現在、実施校は1000校を超えた。

 「弁当の日」を始めた竹下先生が、「弁当の日」を卒業した最初の6年生に贈った言葉がすばらしい。

 ********** *****
   あなたたちは「弁当の日」を2年間経験した最初の卒業生です。
  だから11回、「弁当の日」の弁当づくりを経験しました。
 
 「親は決して手伝わないでください」で始めた「弁当の日」でしたが、どうでしたか。
  
  食事を作ることの大変さが分かり、家族をありがたく思った人は優しい人です。

  友達や家族の調理のようすを見て、技を一つでも盗めた人は、自ら、学ぶ人です。

  細やかな味の違いに調味料や隠し味を見抜いた人は、自分の感性を磨ける人です。

  旬の野菜や魚の、色彩・香り・感触・味わいを楽しめた人は、心豊かな人です。

  一粒の米・一個の白菜・一本の大根の中にも「命」を感じた人は、思いやりのある人です。

  食材が弁当箱に納まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、想像力のある人です。

  自分の弁当を「おいしい」と感じ、「うれしい」と思った人は、幸せな人生を送れる人です。

  シャケの切り身に、生きていた姿を想像して「ごめん」が言えた人は、情け深い人です。

  登下校の道すがら、稲や野菜が育っていくのを嬉しく感じた人は、慈しむ心のある人です。

  「弁当の日」で仲間が増えた人、友だちを見直した人は、人と共に生きていける人です。

  家族が手伝ってくれそうになるのを断れた人は、独り立ちしていく力のある人です。

  「いただきます」、「ごちそうさま」が言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人です。

  家族がそろって食事をすることを楽しいと感じた人は、家族の愛に包まれた人です。

  先生たちは、こんな人たちに成長してほしくって2年間取り組んできました。
  
  おめでとう。

  これであなたたちは、「弁当の日」をりっぱに卒業できました。

********** *****  (『弁当の日がやってきた』竹下和男著・自然食通信社より)


「弁当を作る」ということを通じて、子どもたちは企画力、段取り力、自己管理力を獲得していく。

昔なら、家庭での家事や仕事などの手伝いを通じて、こういう力を自然と身につけていたのだが、今はその機会もほとんどない。

子どもには本来、自分でできる力があるのに、それをさせない大人たち…。

私たち大人が、考えて行動しなければいけないし、時間をかけて見守っていかなければならないようだ。




  
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by dodo-55 | 2012-03-30 17:00 | 食育

第2回モクモク全国食育交流フォーラム2012・講演(1)

ある男子中学生の両親は共働き。忙しいので子どもにお弁当を作る暇がない。母親は子どもに毎日500円渡して、コンビニで好きなものを買うように言う。
最初のうち子どもは、好きなものを買えるのがうれしかった。まわりの子どもたちも、「毎日好きなものが食べられていいなぁ」とうらやましがっていた。
けれど、しばらくすると他の子のお弁当がうらやましくなる。お母さんの手作り弁当が食べたい。けれど、忙しい母を見ていると言い出せない。
そこで、「月に一度だけでいいから作ってくれない?」と頼んでみた。
母親は案の定、困った顔をして、「私が毎日どれだけ大変か知っているやろ?500円渡せるのも毎日一生懸命働いているから。これ以上、無理言わないで」と言う。
子どもはとても悲しそうな顔をして、「お母さん。毎日作ってって言ってないやろ。月に1ぺんだけ。月に一日作ってくれたら他の日はがまんできるのに。月に1ぺんだけ早起きして俺のために弁当作る時間もない? そんなに仕事って忙しい?そんなに仕事って大変?あんたを育てるために一生懸命働いてるのよって言うけどさ、俺、一回だって産んでくれって頼んだ覚えないよ。そんなに仕事が大切なんやったら、俺なんか産まんったらよかったやん」と言う。

**************   ****************   ***********************

こんな例え話から始まったのは、九州大学大学院助教の佐藤剛史先生の講演。
昨年に続いて参加した、モクモクファームの「全国食育交流フォーラム」での基調講演。
今回も深い内容のお話だったので、講演の内容をまとめてみた。

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もし、食べるということが健康な体とか、体を大きくするためだけなら、コンビニ弁当だけで十分カロリーは足りる。野菜が足らなければ、サラダを足せばいい。それでも微量ミネラルが足らないというなら、サプリメントがある。
そういうことではない。この子が一生懸命訴えているのは、「お母さん、ぼくのこと大事? ぼくのことが大事なら、月に一ぺんぐらいお弁当作ってくれてもいいやろ。ぼくのことより、仕事の方が大事なんやないの。弁当作ることで証明してみせてよ」ということ。

「お父さんお母さんがあなたのことが何よりも大事だ。あなたが喜んでくれるのならご飯ぐらいいくらでも作るよ。あなたにはそれだけの価値がある」。そういう見えないメッセージをいかに日々の暮らしのなかで届けていくか。それによって、子どもは「自分は大切にされているんだ。お父さんお母さんはこんなに自分のことを愛してくれているんだ。お父さんお母さんを絶対に悲しませたくない。悲しむようなことは絶対しちゃいけない。自分の命、自分の人生を大切にしよう」という自己肯定感が育まれていく。
「食卓」が子どもの心を育むのだ。
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by dodo-55 | 2012-03-20 21:11 | 食育

食べることは生きること「食育祭 in させぼ」(2)

1月28日に開催された「食育祭 in させぼ」の講演会のテーマは、「食べてつながる命、育つ心」。講師は九州大学大学院農学研究院助教の比良松 道一先生。研究室の女子学生が始めた「弁当の日」に参加し、食育に目覚め、専門の研究の傍ら、大学生が自ら弁当を作って交流する「大学生版・弁当の日」の実践をしている。

講演で聞いた話から ***********

小学生に質問。「朝ご飯を食べましたか?」
 ほとんどの小学生が「食べた」と答える。
「なんで、食べるの?」
 いろんな答えが出たなかで、「食べないと死ぬから」と答えた子どもが一人。
 「食べなければ死ぬ」ということをわかっている子どもたちがいない。今の子どもたちには、飢餓体験もない。「生きるために食べる」ということがわからない。飽食の世の中で、食育を考えていくことは難しい。

「この1週間で何㎏食べましたか?」
 小学生でも1日2㎏、1週間で14㎏は食べている。でも、体重が14㎏増えるわけではない。
「あなたが食べたものは、どこへ行きましたか?」
 1週間で15㎏食べたとして、便で6㎏、汗で3㎏、息(炭素)で6㎏体から排出されている。
 動物が吐き出した二酸化炭素を使って、植物が体を作り、それを動物が食べる。命はつながっている。
 「You are what you are」
 命とは、毎日、こわされながら、つくられています。命とは流れです。

大学生に質問。「日本の農業は大切ですか?」
 大学生の98%が「yes」と答える。
「なぜ、大切なのですか?」
 大学生は日本の食料自給率を気にしている。日本で育てられた米や野菜を食べなければいけないという思いはある。

「いつ、どこで、誰と、何を食べましたか?」(アンケートを実施)
 大学生の4割が自炊をしていない。4割が朝ご飯を食べていない。2割が大学に入ってからご飯を炊いたこともない。学食では定食(多品目を食べる)が売れず、丼物やうどん(単品)が売れる。

誰が日本の農業を支えているのか?(農家は日本人の3%)
この大学生たちは、小学校のころ、「早寝、早起き、朝ご飯」と教えられ育ってきたはず。
教育が「森を見て、木を見ず」であるから、いけない。

肉に注射針をさし込み、脂を注入するインジェクション処理した「霜降り肉」。
「やめられない、とまらない」のは、それがドラッグだから。
2年後でも大丈夫な(腐らない)コンビニのシュークリーム。死なない食品=「ゾンビ食品」という。
今の世の中には、こんな「食べ物」がいっぱい。

「何を食べるか」も大事だが、「どう食べるか」も問題。
大学生の56%が「一人で食べる」と答えている。
東京大学のトイレ内に「タバコ×、落書き×、食事×」という張り紙がある。 
「人に食べているところを見られたくないから」と、トイレで食べている人がいる…という事実!!

日本にはたくさんの捨てられる命がある。
日本人が1年間に捨てる食べ物は、2000万トン(福岡ドーム13個分)。
日本人が1年間に作るお米は1000万トン。

小学校の給食の残飯は、1割で優秀な方。ほとんどは、もっと多い。
残飯がゼロの学校は、月1回の家庭科の時間に「弁当の日」を実施していた。
 ※「弁当の日」とは、香川県綾川町立滝宮小学校に勤務していた竹下和男校長が、子どもと家庭に「くらしの時間」を増やすことを目的に、2001年から始めた試み。献立作りから、買い出し、調理、箱詰めまで、親は一切手伝わず、子どもだけで作るのが特徴。

「弁当の日」に、親が弁当を作った子どもは、弁当を隠し、自分で作った子は堂々と見せる。
誰かに見てもらって、みんなで食べた方がいい。子どもにあこがれを見せると、どんどん自分の力でやるようになる。小さい子どもはうらやましがり、小さいうちから練習しようとする。小さいころから「お母さん、教えて」と言うようになる。

大学生がおかず1品持ち寄りの「弁当の日」を実施。
大学生は「いただきます」の瞬間に、自分のだけが残ったらどうしよう…と思っている。だから、人のおかずをほめたり、レシピを教えあう。そして、「弁当の日」の感想文に、高校時代、毎日母親が弁当を作ってくれたことに対する感謝の言葉が綴られる。

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私が食について危機感を持ち始めたのは、10年ほど前。当時の大学生の食生活にショックを受けたからだが、10年経ってさらに状況はひどくなっている気がする。

私自身は、高校生のときまでほとんど料理をしなかったが、大学生のときの一人暮らしで鍛えられたと思う。当時はコンビニもなく、田舎だったので外食できるところも限られていて、自分で作るしかないという状況ではあった。おまけに、電子レンジもなく、冷蔵庫も冷凍室のない1ドアのものだったし、台所は下宿で共同。時間を工夫してどうにか毎日自炊していたものだ。
でも、今や、どんな田舎に行っても、コンビニも自動販売機もあるし、食べようと思えばいつでもどこでも食べ物が手に入る。

学生から始めていては遅いのかもしれない。幼児や小学生のうちから、きちんと伝えていかなければ、一生自分で作ることも、その必要性も感じないままに終わってしまうかも…。

「弁当の日」の取り組みとその後の子どもたちの変化については、『食卓の向こう側』(西日本新聞社)を読んで、西日本新聞社の佐藤弘さんの講演を聞いて、マンガ『玄米せんせいのお弁当箱』(小学館)を見て共感している。京都でも何とかして広めていけないかなぁと考えているところ。

食育は難しいし、すぐに結果が出るものではないのだが、できることから少しずつ始めていこうと思う。続けることで、広がっていくということは、今回の食育祭で実感できたから。
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これは、講演者の比良松先生が、「弁当の日」に家族と一緒に作ったもの。楽しそう!
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by dodo-55 | 2012-02-25 11:36 | 食育

パワーを実感 「食育祭 in させぼ」(1)

「食育」という言葉はあまり好きではない。というより、どうも体にしっくりこない。

「食育」という言葉は、石塚左玄が1896(明治29)年・1898(明治31)年の著作のなかで、「体育知育才育は即ち食育なり」と造語したもの。「子どもに食べさせる食品の影響によって子どもの心身を養う」という意味で用いた。
彼の著書を読んで共感していた報知新聞編集長の村井弦斎が、1903(明治36)年に連載していた人気小説『食道楽』の中で、「食育」という言葉を使用した。(フリー百科事典『ウィキペディア』より)

そんな明治時代の造語が、広く使い出されたのはここ10年くらいのこと。平成17(2005)年に「食育基本法」が成立してからは、やたら耳につき始めた。
外食産業や食品製造会社、食関係の出版社に勤めた経験から、仕事で「食」に関わることが多かった私は、ずっと「食」に関心を持ち続けてきたが、「何かおかしい。何とかしなければ」と危機感を持ち始めたのも、ちょうどそのころからだ。

危機感を感じたのは、一人暮らしの学生向けの料理本の編集がきっかけだった。資料として読んだ『食卓の向こう側』(西日本新聞社)の影響も大きい。何かしなければ。私にできることは?と、ずっと気になりながらも、具体的に動くとことができずにきた。
昨年2月に「全国食育交流フォーラム」(三重県・モクモクファームで開催)に参加したのも、今回「食育祭 in させぼ」に行ってみたのも、『食卓の向こう側』つながりだ。「食」を取り巻くさまざまな問題を、「できることから何とかしたい」と、そのヒントになりそうな何かを求めて動いてみると、「食育」という言葉に出会うことが多くなってきた。

「食育祭 in させぼ」は、長崎県佐世保市に事務局のある「大地といのちの会」主催のイベント。『食卓の向こう側』の中でも登場した吉田俊道さんが代表を務めている。吉田さんは生ごみリサイクルで生まれた土で元気な野菜を育て、食べることで、いのちの大切さを伝える活動をしておられる。
「生ごみリサイクル元気野菜」の取り組みに共感した私は、昨年春に佐世保の事務局まで出かけ、詳しいやり方も教えていただいた。講師の一人である中尾慶子さんが、大学の後輩であることがわかり、精力的に活動されていることを知り、刺激になっている。

食育祭は今年が第6回。メインの講演会をはじめ、昔ながらの製法で取り組む農産物や加工食品の生産者による展示・販売会、元気野菜や発酵食品の食べ比べ、、クッキングコンテスト、試食会、血管年齢や骨密度測定、保育園や小中学校の取組の紹介や展示など盛りだくさん。
昼食用に販売されていた弁当も、健康的な美味しいお弁当で、大満足だった。
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保育園の熱の入った展示、その取り組みのパワーには圧倒された。
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熊本・南阿蘇地方に伝わる伝統的な「ふさ切り」で作った切干大根。
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試食もさせてもらい、「帰ったら作ろう」とレシピもいただいた、子どもに食べさせたいおやつ。
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納豆も手作り!の保育園。「ワラが手に入りにくいでしょう?」の質問に、「園長先生の家で育てたワラです」と保育士さん。いい環境にあるんですね~。
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節分の日の給食メニュー。豆は煮豆に、金棒はイワシのすり身でできてる。鬼の顔が巻き寿司。
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こんな野菜も、
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こんな果物も、すべて園庭の畑や木から収穫して食べるなんて、うらやましい限り。
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中学1年生が「弁当の日」に、こんな弁当を自分で作れるとは!
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「弁当の日」に取り組んだ中学生の感想文には「感謝」の文字が多い。これこそ「食育」だ。

息子がお世話になった保育園も、給食や子どもクッキングには力を入れておられたので、親としては6年間本当にありがたかったのだが、九州の保育園のレベルの高さには驚いた。
ここで展示されていた保育園のほとんどが、「大地といのちの会」の「生ごみリサイクル元気野菜」に子どもたちと一緒に取り組んでおられる。

ある保育園では、だしの飲み比べをされており、試飲させていただいた。一つは昆布とアゴ(=トビウオ・九州では一般的)、野菜の皮やヘタから取っただし、もう一方は粉末のだしの素で作っただしである。
昆布や野菜で取っただしは、いろんな甘みや旨味が口の中に広がる感じ。だしの素で作った方は、飲んだ直後は「美味しい」と感じるのだが、味が単調。園長先生は、「だしの素は塩気ばかりが立つ。野菜だしは調味料をほとんど加えなくても味がある」と話された。この園では、育てた野菜をできるだけ皮ごと、まるごと食べ、残った皮や芯、芽の部分はだしを取るのに使っている。そこまでできるのは、元気な野菜、それが育つ健康な土があってのことだ。そんな元気な野菜を食べて育つ園児たちもまた、元気いっぱいの健康優良児なのだろう。

土から野菜、人間のいのちまでつながっていることを、実感できる展示だった。
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by dodo-55 | 2012-02-20 21:32 | 食育

食育ではなく食楽を

左京区のある保育園で食育講座を担当させていただいた。
今参加している、京都市の「食育指導員養成講座」の実践編として、市内の保育園や保健センターなどで食育活動のお手伝いを実際に体験するためのものだ。

私が担当した保育園では、園内の畑で保育士と園児が野菜や原木シイタケの栽培をしている。事前の打合せで、子どもたちが京野菜についてはほとんど知らないこと、シイタケは給食ではあまり人気がないことから、「京野菜とシイタケの栄養についてお話をしてください」と依頼されていた。

お話する対象は5・6歳児35名。時間は30分。
「みんなはお野菜好きですか? どんなお野菜知ってるかな~。知ってるお野菜の名前を教えてください」と言って、野菜の名前を挙げてもらい、用意してきた野菜の絵を机に次々と張っていく。
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野菜の絵の色塗りは息子も手伝ってくれた。
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ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、サトイモ、ゴボウは、家にあった現物を持って行った。
ほぼ出尽くしたところで、「いろんな野菜があるけれど、京都にはこれとはちょっと色や形や大きさのちがう『京やさい』というのがあって、昔から京都で作られてきました」と説明し、今度は実物大の京野菜アートを「これ、見たことあるかな~?」などと言いながら一つ一つ並べる。
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これは、ライター仲間の江角悠子さんのご主人・平尾ケイゴさんの作品をお借りした。平尾さんはダンボールアート作家。ダンボールの骨組みに和紙を張って、本物そっくりの京野菜を見事に表現している。
それぞれの野菜の特徴や名前の由来を簡単に説明したあと、三択クイズを出して子どもたちに答えてもらう。
例えば、「聖護院カブラを薄く薄く切って漬けた、京都の有名なお漬物の名前はなんでしょう?」
「①十枚漬け ②百枚漬け ③千枚漬け」。答は、紙に1枚ずつそれぞれ、10、100、1000と書いたものを見せながら、手を上げてもらう。子どもたちは、正しい答を知らないから、ほとんど勘。

ゴボウをポキリと折って、「普通のゴボウは中身がこうなっています。では、堀川ゴボウを切ると、切り口はどうなっているでしょう?」
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「①ふつうのゴボウみたいにいっぱい詰まっているかな?」
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「②中はスカスカしていて、穴が空いているかな?」
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「③それとも、ドラえもんの顔のような模様になってるかな?」
と、こんな感じで子どもたちと一緒に遊んだ。

聖護院カブ、賀茂ナス、九条ネギなどのいわゆる「京の伝統野菜」については、私自身何となく知ってはいたが、食べる機会も少ないし、栽培したこともない。シイタケの栽培ついては、全く知らない。これでは話もできないと、シイタケは三重県のモクモクファームで、京野菜については、北区の森田農園の森田さんにお話をうかがい、夏ごろから情報を集めてきた。

京野菜の旬は夏か冬のものが多い。今の時期は旬とははずれていて、現物は手に入りにくい。本来なら、京ニンジンと西洋ニンジン、カブと聖護院カブなど、ふだん目にする野菜と京野菜の実物を見せて、触ったり、匂いをかいだり、食べたりしながらその違いを感じてもらうのがいいのだけれど、それは難しい。おまけに、衛生上の理由で、持ち込んだ食材の試食も園では禁止されているらしい。

京野菜は京都の歴史や文化、気候と関わりがある。とはいえ、話す相手は5~6歳児。難しい話は通じない。結局、苦肉の策で、今回の絵と立体アートを使ったクイズ形式になったのだ。
それでも前日の夜、小学生の息子相手に模擬講座をやってみたが、いろいろ指摘された。
「『農家』って言葉がわからへんのとちゃう?」「そうか…。じゃぁ、『お百姓さん』は?」
「よけい、わからんわ!」「ほな、何て言うたらええの?」
「『畑やってる人』で、ええんちゃう?」
そのほか、「明治時代」は「むかし」に、「都」は「人がいっぱい住んでいるところ」に、変えることにした。

堀川ゴボウのクイズのときには、「③の『ドラえもんの顔』をいったん正解にしたら、子どもたちはびっくりするんとちゃう?」という息子のアドバイス。
その通りやってみたら、言うとおりになり面白かった。ドラえもんに手を上げた子は誰もいなかったから、「正解はコレ(ドラえもん)です」と言うと、「えっ~!!うそ~!」と大騒ぎ。「ではなくて、本当はコレ(中に空洞)です」と言い直したら、やっぱり~という顔。

それにしても、野菜の名前を答えるとき「ぶたにく」と言う子がいたり、全員がサトイモを知らなかったり、意外な反応があり勉強になった。
海老イモと比べるためにサトイモ(現物)を見せたのだが、「……??」「ニンニク?」「ショウガ?」という反応。「給食で出ませんか?」と先生に聞くと、「筑前煮などに使ってます。みんな食べたことあるやろ~」。先生の話では、「たぶん皮のついた状態を見たことがないのでしょう」とのこと。だから、皮をむくときヌルヌルして手が痒くなるということも知らないはず。「おじいちゃん、おばぁちゃんと暮らしている子は3人ほどしかいないし、母親世代は皮をむいて洗ってある小芋を買っている人がほとんどかもしれません」と先生。
こんな会話ひとつからでも、子どもを取り巻く食環境の現実が見えてくる。

翌日、保育園からメールがきた。
「楽しくお話してくださったので、子どもたちもリラックスした状態で、楽しく話を聞けました。子どもたちは、『鹿ケ谷カボチャと賀茂ナスは知ってたけど、ほかは知らなかった。』『今度、お母さんと一緒にスーパーに行って見てみる』と楽しく学んだことを話していました」。
うれしかったのは、「子どもたちが学んだことを忘れてほしくないので、今週の給食の献立で、金時ニンジンを使ったキンピラを出すことにしました」と書いてあったこと。
たとえ子どもたちが「おいしくない」と感じたとしても、金時(京)ニンジンがどんな味なのかを体感してくれたら、それでいい。
「坂田金時っていうお侍さんの顔が赤かったから、赤いニンジンを金時ニンジンって言うようになったんやって」と、覚えてくれているかな?
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by dodo-55 | 2011-10-20 14:56 | 食育

全国食育交流フォーラム( モクモクファーム)に参加

7年前、ある本に強い衝撃を受けた。
それは「食卓の向こう側」というブックレット。食卓から現代社会を見つめ直そうと、2003年から西日本新聞の1面に長期連載された内容をまとめたものだ。
 その本に出合ったとき,ちょうど私は「学生のための一人前!レシピ」という本の編集を担当していて、大学生協の栄養士さんの協力のもと、学生が自炊するのに役立つメニューを考えていた。
学生食堂に見学に行ったり、学生のアンケート結果をまとめたりするうち、当時の学生の食生活や住環境、健康のことなどを知るなかで、自分の学生時代とは明らかに違うことに驚き、「こんな状態でいいのか」と心配することも多かった。
 「食卓の向こう側」は、今どきの大学生の食生活や健康についての衝撃的な話から、フェイク(もどき)食品、輸入農産物、添加物まみれの加工食品などの現状、生活習慣病、摂食障害といった食をめぐる不安など、食に関するさまざまな問題を多角的な視点から伝えていた。

 今回参加した「全国食育交流フォーラム」は、三重県のモクモクファームを会場に2日間にわたってさまざまなプログラムが用意されていたが、その中で「食卓の向こう側」の新聞連載を企画編集された西日本新聞社の佐藤弘氏の講演を聴くことができた。
 佐藤氏のスライドを使ってのお話は、ときに涙し、ときに笑い、90分があっと間に過ぎてしまうほど、楽しく中身の濃いものだった。

・食育を「食べる」ということだけから考えてはいけない。
・「食べる→噛む→排出する→ゴミ・排出物→処理する→土に返す→作る・獲る→買物をする・調理する→食べる」という概念の中で多角的に考える。
・体験のない食育は意味がない→「子どもに魚を与えるな。釣り針を与えよ」
・「田植えを教える」ではなく「田植えで教える」。何を教えるかが大事
など、キーになる言葉をたくさん教えていただいた。

 7年前に本に出合って以来、ずっと気になっていたいろんなことが、話を聞いたことでドドッ~と一度に動き出したような感じで、講演が終わってしばらくは興奮気味だった。
「『お弁当の日』を、子どもの小学校でもぜひやりたい!」と思わず口走ってしまったが、「熱い人は、うっとうしがられますよ」と、佐藤氏は講演中にも言われた言葉を再度口にされた。
 佐藤氏の講演をはじめ、今回の食育交流フォーラムでは、多くの人との出会いから強い刺激を受けた。いろんなことを吸収しすぎて、消化不良を起こしそうなほど。家に帰ってからも、早く誰かに伝えたくて、何か行動を起こしたくて、落ち着かない。
 まずは、頭を整理しなければ。自分にできる方法は? 何をどう伝えていく? 無理なく継続できる形で「食育」に関わっていきたいと、今、いろいろ考えている。

 ほかに私が参加したのは、「学んで食する 豚半頭まるごと食べる会」。
モクモクファーム・ハム工房の工房長・松尾尚之氏の見事な庖丁さばきを目の前で見ながら、豚肉の部位や料理の話を聞き、最後に肉を味わうというもの。
 実は私は、豚そのものを解体するところから見る、解剖的なイメージを持っていたので、頭のない半身のデカイお肉が横たわっているのを見たとき、「なんだ。ここからか…」と多少がっかりしたのであった。
「まるごと食べる」というので、顔や舌、内臓など、普段食べられない部分の味も…と期待していたのだが、そうではなかった。
(たぶん、そうだったら、参加者は半減していたかも)

豚は、イメージしていたよりも大きかった。
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真ん中あたりに残る臓器は腎臓。脂に埋もれた状態になっているので、残ったまま肉屋さんから届くそう。あとで、取り出した腎臓の匂いもかいでみた。腎臓だけに、尿の匂いがするとのことであったが、そんなにきつくはなかった。これももちろん焼いて食べた。
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やはり豚はかなり脂が多い。「私のお腹もあんな風?」と心配になる。溶けにくい背脂とすぐに溶ける腹脂も触らせてもらい、その差を体感した。
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肋骨の1本1本の間に、丁寧に庖丁で切り込みを入れ、
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T字の道具の先についた輪っか状の糸を骨の先にひっかけて、引っ張ると肋骨が取れる。
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肉は、トントロ、ヒレ、ロース、モモ、バラなど、おなじみの身となって次々に切り分けられていく。
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内側に見えるのがスペアリブ。
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豚半頭で、これだけしか取れないトントロ。
脂はコラーゲンがあるので、化粧品などにも使われるそう。軟骨の部分は沖縄のソーキソバに入れるなど、余すところなく利用されるようだ。
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最後は、たっぷりの生野菜、焼き野菜と、ツヤツヤご飯とともに、いただきます!
「まるごと食べる」教室は子どもたちにも好評だそうで、見ているだけでなく、「やってみたい!」という子も多いそうだ。魚も肉も、命をいただいていること、どこの部分を食べているのかを知ることができ、いい勉強になると思う。
子どもだけでなく、私自身もまだまだ知らないことが多い。
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by dodo-55 | 2011-02-26 11:40 | 食育