人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「昭和な」映画を見て「昭和」に浸る

年始から出町座で上映されているドキュメンタリー映画「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~ 」と、付録上映の「昭和30年代の暮らし映画特集」を見てきた。
「スズさん」は、生活史研究家・小泉和子さんの実家である「昭和のくらし博物館」(東京都大田区)で撮影されたお母様・スズさんの暮らしの物語。

「昭和な」映画を見て「昭和」に浸る_d0182852_18212805.jpg

私はちょうど10年前にこの博物館を訪ねており、当時のブログには、
   単に家やモノだけが保存されているのではなく、匂い、音、声までもリアルに残って
   いるような気がする。
   家やモノにまつわるいろんな物語が、いっぱいいっぱい詰まっている。
と書いている。
今回映画でリアルな昭和のくらしを見て、家やモノにまつわる物語を知ったことで、あらためて現代のくらしについて考えさせられた。

「昭和な」映画を見て「昭和」に浸る_d0182852_18231549.jpg

スズさんの家には子ども4人を含む家族6人と下宿人2人が住み、スズさんは毎日6人分の食事と洗濯をまかなっていた。
空いた部屋を学生に貸す下宿は、私が小学生のころまでは珍しくなかったし、私の家も別棟ではあったが下宿生を受け入れていた。
当時は賄いつきも多く、スズさんの家ではそうだったようだ。
もちろん当時は、電子レンジや今のような冷蔵庫も、洗濯機もない。
庭の洗濯桶で着物やシーツを手洗いする場面があったが、これを毎日6人分とは、気が遠くなる。

それよりも大変だったのは縫物。
着物の洗い張りや布団カバーの直しなど、縫物仕事は家事の三分の一を占めていたという。
夏用の掛布団作りの場面では、古い浴衣をほどき、洗い、ふのりをつけて板張りにして干し、手縫いし、綿を入れるまでの作業が映っていた。
撮影時スズさんは70代で、「昔はこんなの1日あればできたんですけどね。歳をとると時間かかっちゃって」と言っていたが、1つのことに1日がかりって……。おそらく当時はそんな家事が他にもいっぱいあったと思う。

おはぎを作るシーンも印象的だった。
私も時々おはぎを作るが、粒あんでしか作らない。こしあんは大変だからだ。
でもスズさんはこしあんを作っていた。
炊きあがったあずきをすり鉢ですりつぶし、竹ざるで濾して、布で絞る。さらに鍋で煮つめ、鍋底が見えるぐらいのかたさまで練る。
そうしてできたこしあんで1つ1つご飯を包んで、やっとできあがり。
そういえば、私のおばぁちゃんの作るおはぎも絶品だった。私はまだまだその域には達していない。

「昭和30年代の暮らしを描いた短編映画特集」で見たのは、
主婦のくらし「町と下水」「路地のある街」「町の政治ーべんきょうするお母さん」「村の婦人学校」
都会のくらし「おやつ」「おやじの日曜日」「遊び場のない子どもたち」
住宅問題「スラム」「新しい街」
いずれも、1950年~1960年代に撮られたモノクロ映像だ。

ゴミ集めの収集車(当時はリアカー)が来たらバケツからゴミを直接投入する主婦たち。出し遅れた婦人が、家の窓から直接前の道路にゴミをばらまくシーンは強烈だ。
かと思えば、郊外住宅に住む主婦たちが身近な問題をめぐり市政に関心をもち、政治に参加することで問題解決を目指す場面には感心させられた。当時に比べて子どもの数も減り、家事も楽になった現代の主婦たちが政治に関心を持って行動しているだろうか?
家族で銭湯に行くシーン、団地生活などは懐かしく、どんな場所にも子どもがワラワラといっぱい映っているのもひと昔前になってしまった。

なんとも懐かしく、楽しいような少し悲しいような、昭和の時代。
今の子どもたちも、50年後、60年後に今の生活を振り返ったら、同じような気持ちになるのだろうか。





by dodo-55 | 2022-01-15 11:59 | 作品展・個展・映画


<< 鰹節男子 >>