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夏の終わり

 この夏、甲子園で活躍したある高校のキャッチャーにハマってしまった。
 対戦チームの俊足1塁ランナーが盗塁したとき、2塁へ投げた球が間に合わず、マスクを取って苦笑いした、その笑顔にズキューンと胸を射られたのだ。
 この子誰? 何ていう名前? 何年生? と気になったのだが、その場面をテレビで見たのは、息子が録画していた『熱闘甲子園』の準々決勝のワンシーン。しかも、その録画を見たときには、すでに決勝戦も終わっていた。
 その選手の情報がほしくてネットで検索し、なんとか名前だけはわかったので、インタビュー記事がないか、さらに検索してみるも、試合後のコメントなどはピッチャーかキャプテンか、バッターとして活躍した選手のものばかり。
 あぁ、やつぱり、キャッチャーは地味やなと嘆いていると、「そやで。キャッチャーはそんなもんやで」と息子がつぶやく。

 小学1年生で野球を始めた息子は、2年生のとき「捕球が一番上手やから」と監督さんに言われ、キャッチャーになった。以来、中2の今までずっと、ポジションはキャッチャー。
 野球ではやはり、ピッチャーが花形だ。キャッチャーはひたすら座って球を受けるだけだし、テレビに映っても、マスクをしているから顔が見えない。
 少年野球時代、試合中、監督さんに目立って怒られるのはバッテリーの2人だったが、試合に勝ったとき注目されるのは、ピッチャーだけ。「女房役」とはよく言われるが、地味なポジションだなと思うのだ。
 息子に聞いてみたことがある。
 「ピッチャーをやりたいと思ったことはないの?」
 「ない」
 「ほんとは、どこのポジションがよかったん?」
 「キャッチャー」
 「キャッチャーの、どこがおもしろいの?」
 「ピッチャーに出した指示通りに球がきて、バッターが打てなかったときが、気持ちいい」

 ピッチャーは常に注目されているし、内野手や外野手はファインプレーをしたときは目立つ。同じやるなら、目立つ方がカッコイイやん、と私などは思うのだが。
 「母ちゃん。一番暑いのはキャッチャーやで。防具着けてるから、熱がこもってめちゃくちゃ暑いねん。それに、キャッチャーは座ってるだけとちゃうで。結構守備範囲が広いねん。自分より後ろにいったボールは全部とらんならんし、1塁ベース近くまでカバーに走らんならんこともある。防具着けてるからめっちゃ走りにくいねん」と、小学生のときに息子は言っていた。
 キャッチャーだけが、ほかの8人とは反対を向いて守っているため、全守備を見渡すことができる。バッターやランナーはもちろん、全てのポジションに目を配り、指示を出さなければいけない。冷静かつ敏速な判断も要求される。

 夏休み最後の練習のあと、秋季大会に向けて、息子はキャッチャー防具一式を持ち帰り、夜に自分で洗っていた。次の日「干しといて」と頼まれたので、洗濯ものカゴに入れて2階の干場まで運んだ。水を含んでいたせいもあるが、ズッシリと重かった。
 こんなもん身につけて、炎天下でずっと座ったり、走ったりしているのだなと、今さらながら気づいた。高校野球を見てミーハーに騒いでいる私は、ちょっと恥ずかしく感じた夏の終わりである。
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# by dodo-55 | 2014-09-02 21:41 | 野球

お菓子作りは、あほの一つおぼえ。

 毎年、春のいちご大福と初夏の水無月は手作りするのだが、今年はおはぎに初挑戦してみた。
 先日、北白川の「スコップ&ホー」でおはぎ作りの教室に参加したこともあり、お彼岸にはぜひ手作りしてみたいと考えていたのだ。いちご大福に入れるこしあんは、市販の粉あんに水と砂糖を混ぜて練り、水無月にのせるあずきは、甘納豆を使っているので、これまで餡を手作りしたことはなかった。餡作りは、時間がかかりそう、鍋につきっきりになりそう、と思って避けていたのだが、やってみるとそうでもなかった。
 
 本当は、週末の3連休に作るつもりだったが、おはぎ好きの母が旅行に行くため、「それまでに食べたい」と言うので、平日の、仕事しながらのおはぎ作りとなった。鍋から目が離せないので、食卓で校正をしながら、ときどき台所に立つ。
 
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 あずきの煮える甘い香りが、何とも心地よい。あく抜きの湯こぼしが済めば、ひたすら弱火でコトコト煮るだけ。その間に、仕事、仕事。
 
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 あずきを煮ている隣で、もち米を蒸す。タイマーをセットして40分。ふたを取って、蒸しあがりを確認するときの、ふわりと立ち上る湯気に、ほっこり。
 コトコト煮るとか、蒸すとか、台所でゆっくり静かにできあがっていく時間が好きだなぁ。

 柔らかく煮えたあずきに砂糖を入れ、煮詰めるときにはさすがに鍋から離れられず、ずっとかき混ぜていたけれど、時間にしたらわずかに10分程度。餡を冷まし、蒸しあがったもち米を丸めて、餡でくるんだり、餡を入れてきな粉をまぶしたり。この手作業が楽しい。子どもが土団子を作る感覚?にも似て、童心に返るし、無心になる。
 これが、和菓子作りの醍醐味かも。「手で作っている」という感じが好きなのだ。洋菓子の場合は、粉をふるったり、卵やクリームを泡立てたり、オーブンに入れたり、道具がいろいろと必要で、しかも分量や作業をレシピ通りにしないと、でき上がりに差が出たり、まったく別ものができたりと、最後まで気がぬけない。その点、和菓子作りは割と単純。蒸し器とボウルがあればできるし、油を使わないので、洗物も楽。
 結局、洗物まで終えて、2時間ほどですべてできた。
 
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 初めてにしては、上出来。…となると、うれしくなって、しばらくはこればかり作ってしまうのがいつものパターン。いちご大福も、水無月も、シフォンケーキも、そうだった。まったく、アホの一つ覚え。もともとお菓子は食べることよりも、作ることが好きなので、できたものはいろんな人の胃袋に消えることになる。
 さっそく母が、お昼ご飯のあとに2つ試食。母は「もう少し甘い方がいい」と言うが、私はいつも甘さ控えめ。学校から帰ってきた息子が、「おっ! おはぎや!」とうれしそう。洋菓子よりも断然和菓子派の息子は、おやつに何個食べるだろうか。
 おっと、忘れていた。まずは父に、仏壇に供えないと…。お彼岸のおはぎ作りは定番になりそうだ。

 
# by dodo-55 | 2014-03-20 14:17 | お菓子

中学生男子のおやつは、米・粉・イモ

 土曜・日曜の部活が午前中や午後の早い時間で終わったとき、中学生の息子の友達がどやどやと遊びに来ることがある。
 5~8人がリビングに集まって、ゲームをしているだけなのだが、男子ばかりなので何とも暑苦しい。小学生のときは、玄関に並ぶ靴もかわいらしかったが、今はみんな足がでかい! 外出先から帰ってきたら、もう私の靴をぬぐ場所もない。
 こんな中学生男子は、いつもお腹をすかせている。私が家にいるときは、なるべくおやつを出すようにしているが、小学生のときのようにスナック菓子ではおっつかない。中学生男子には、「米・イモ・粉」が必須。
 たとえば、ある日はひたすらジャガイモを刻む。トントン、トントンとみじん切りに。塩・コショウして、片栗粉少々を混ぜ、バターで焼けば「ハッシュドポテト」。
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 この4つ目のパーティーパンが大活躍。上からギュっと押さえる丸いプレスごてのようなのや、細いフライパン返しも備品でついている。丸い形に両面こんがり焼けるし、1人分ずつ食べやすい大きさなのがいい。これで焼きおにぎりやホットケーキも焼く。
 ホットケーキミックスも常備。抹茶を加えたり、牛乳のかわりにオレンジジュースを混ぜたり、焼きりんごや小豆を入れたり、バリエーションも増えてきた。

 ある日は、「てんてら焼き」。これは京都北部のおやつだそうで、息子が通っていた保育園の給食の先生に教えていただいたレシピ。小麦粉・砂糖・塩・ベーキングパウダー・水を混ぜてこねた生地で、サツマイモあんを包んで、ホットプレートで焼くだけ。
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両面うっすら焦げ目がついたところで、アツアツを出す。

 ほかには、ニラだけ入れたチジミとか、すりおろしたジャガイモを混ぜたお好み焼きとか。薄く切ったサツマイモをフライパンで焼いただけのものとか。とにかく、お腹のふくれるものを出すようにしてる。冬は寒いので温かいコーヒーミルクやココアを付けて。
 5~8人分用意するのに、だいたい20~30分ほどかかるけれど、出したとたんワッと手がのびて、完食までほとんど30秒。
 これだけ食べても、5時になったら全員で帰りがてら、近くのコンビニや駄菓子屋のような店に寄って、また何か食べるらしい。息子も自転車でついて行って、から揚げなどを食べ帰ってくる。そして、晩御飯もしっかり食べるのだ。

 ほんまにどんだけ食べんねん。まぁ、みんな運動してるし、食べ盛りだし、いいか~。
 私は何より、旨い旨いって食べてくれる姿を見るのが好きなのだ。


 
 
# by dodo-55 | 2014-02-06 22:13 | 悪ガキ

お盆に思う。

お盆に入ったチラシ3種。
 お盆にはお寿司。……お盆に魚?
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 お盆に焼肉。……お盆にお肉?
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 お盆のお供えものは、お盆に入れば値下がりする。25日のクリスマスケーキのように…。
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 今では当たり前のことなのかもしれないが、私にはどうも違和感がある。
 小さいころ、「お盆には虫や魚はとったらあかん」(殺生はあかん)と親に言われ、つかまえた虫や魚は逃がしてやった。
 お盆には家に親戚が集まることが多かったが、お寿司や焼肉を食べたことはないし、普段通りのおかずだったと記憶している。 

 中学生のころだったか、お盆に友達の家に初めて遊びに行った。私立の女子中学校に通っていたので通学圏が広く、 友達の家へは電車とバスを乗り継いで行った。夏休みも毎日クラブ活動があったため、お盆休みにやっと遊びに行けたのだ。
 その日のお昼ご飯は、おにぎりと漬物、胡瓜とわかめの酢の物、味噌汁だった。友達のお母さんは、「ごめんね。今日はお盆やし、これで」と言った。わざわざ遠くから来てくれたのに…と申し訳なさそうだった。私は、お盆だからと、肉や魚を使わない精進料理で、きっちりすごしている友達の家に感心してしまった。いただいたお昼ご飯は食べ盛りの中学生にしては質素だったが、おくどさんで炊いたご飯で作ったおにぎり、お母さんが漬けたぬか漬けがとてもおいしかったことを覚えている。友達の家は大きな材木商だったので、余った端材を食事やお風呂に使っていた。当時でも珍しい、台所にはおくどさんがあり、お風呂は五右衛門風呂だった。

 お盆は、仏壇がいつもより華やかになり、人が集まり、浴衣を着せてもらったり、くるくる回る盆提灯がきれいだったり、子どものころは、なんとなく楽しかった。けれど、ワイワイ楽しむお祭りではないことは感じていたし、静かに進行する楽しい行事という感じだった。大人になってもお盆といえば、お墓参りと大文字の送り火ぐらいにしか関わってはいなかった。
 5年前に父が亡くなり翌年の初盆のとき母が入院中で、お盆のあれこれを私がしなければならなくなり、初めてその大変さがわかった。
 母から、お盆にしなければいけないことを書いたメモを渡された。
<お盆>10日ごろ、六道さんへお迎えに行く
 13日 花菓子、迎え餅(2個)、仏花(蓮入り)、盛物(大きい蓮の葉の上にのせる)。花屋で大きな蓮と一番小さな蓮を買う
 14日 おはぎ、そうめん(にゅうめん)、干椎茸細切り入れる
 15日 スイカ、白蒸し(近くのおまん屋さんにある)
 16日 早朝にご飯、アラメ煮(ひじき)揚げ入り、送り餅(2個)
      普通の仏花にする、すまし汁(ふ・椎茸入り)とろみをつける

 この一連の事々を嫁いで以来、母は毎年やってきていた。私は一度もしたことがなかったが、見てはいたのでメモを見ただけでなんとなくできた。

 父や祖父母の眠るお墓は、家から歩いて15分くらいのお寺にあり、毎年お盆と年末の檀家掃除のご奉仕には、私と息子が行っている。息子が小学校に上がる前から連れて行っていたのだが、本堂の長い廊下や階段の雑巾がけを丁寧にやってくれ、奉仕に来られている檀家さんたち(ほとんどがお年寄り)から頼りにされ、「えらいねぇ。うちの孫なんて家で寝てるわ~」と、ほめられ続けてきた。息子にすれば、ご奉仕のあとに出される夏はアイスクリーム、冬は菓子パンやみかんが楽しみで行き始めたのだが、6年生までずっと続けてついてきてくれたのは、檀家さんたちから「えらいね~」とほめられ、頼りにされることがうれしかったのかもしれない。家でも学校でも、一日にこんなにほめられることなんてないもんな~。

 今年、中学生になった息子。お寺の掃除はクラブ活動で行けなかった。お盆休みに入ったとたん、起きてくるのも昼前の生活。墓参りに行く前日、「明日は朝早くお墓に行くしな」と私が言うと、「朝、起こしてや」と息子。朝、どうせ起きてこないだろうと思っていたのに、ちゃんと起きて墓参りにもついてきた。桶に水を入れて運び、墓石にかけるのが彼の担当。「昔は、せのびして水かけて、自分にかかってたりしてたな~」「今は完全上から目線で水かけてるもんな」。母も思わず微笑む。

 近所の商店街の、ある店の前の小さな黒板には、毎日、お客さんに向けての言葉が書かれている。
 昨日書かれていたのは、こんな言葉。「みんなに今日、集まってもらったのは、ほかでもない。 by 先祖」。

 お盆にこんなことを感じるようになったのは、私もあちらの世界に近くなってきたからかな?
 お盆を過ぎたら、私は50歳の誕生日を迎える。
# by dodo-55 | 2013-08-13 17:34 | 京都

「店の裏は海」。居酒屋伏見。(続き)

 居酒屋伏見には、鯖寿司もある。カウンターの一角に何本も並べてある。
 京都には有名な鯖寿司の店もあるが、わが家では母がお祭のときなどに手作りするので、わざわざ売っているのを買うことはない。でも久しぶりに鯖寿司が食べたい。「伏見」の鯖寿司は1本売りだが、みんなで1キレずつ分ければいいかな。…ということで、残ったら私が引き取ることにして、鯖寿司を頼む。
 おばちゃんが、また私たちの前に立って「あこうは食べた?」と聞く。その時すでに手に注文書を持っている(書く気まんまん)。
 「あこう?」
 「アコウ鯛。夏の魚の女王やで」
 「でも、さっきヒラメの刺身食べたしなぁ…」
 「おいしいし、食べとき」
 有無を言わさず、注文書に書く。「アコウひと~つ」。注文が通る。
 まぁ、いいか。伊勢えびとはちがうし。(伊勢えびは高い。その日も「時価」としか書いてなかった)

 しばらくすると、赤いきれいな鯛の姿造りが出てきた。「あとで、骨は味噌汁にできるしな~」とおばちゃん。
 それは、ちょうどいい。最後のしめに鯖寿司と一緒にいただくとしよう。
 それにしても、ほんとにどれもおいしい。ほとんど魚メニューだが、刺身はもちろん、煮物も、揚げ物も。やっぱり、「店の裏は海」にちがいない。厨房の奥では波の音が聞こえる はず…。

 もうほとんどお腹いっぱいだが、あと少しなんか食べたいな~。メニューを見る。「ウニの天ぷら」を注文。出てきたのは、一口大のウニを海苔で巻いて揚げたもの。お皿の上にちょこちょこっと並んでいる。かわいい~。「うちにも、かわいいメニューあるんやで」とおばちゃん。ドッカン、ドッカンと盛り上げた、荒っぽい(?)メニューだけじゃないのだ。
 最後に鯖寿司とあこうのアラの味噌汁をいただく。味噌汁は鯛のだしが出て、うまうま~。ちょうど、しめを食べているタイミングで、バイト君たちが「漬物いかがですか~」と、ナスと胡瓜のぬか漬けの皿盛りを両手にカウンター内を回る。色といい、盛り方といい、和食コースのしめに出てくる上品に盛り付けられた浅漬けではなく、家で食べる「どぼ漬け」という感じ。安いし、量も多いけど、もう食べられません。

 結局、ビールも2~3杯は飲んだと思うのだが、お腹いっぱい食べて一人3500円だった。店を出たのが6時半。まだ外は、ぎんぎんに明るい。
# by dodo-55 | 2013-08-13 16:40 | お気に入り